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ど素人が不動産賃貸業を始める物語 | 第3話「いつだって君は突然現れる」



We are never so defenseless 
against suffering as when we love.

恋に落ちているときほど、
苦痛に対して無防備であることはない。

Sigmund Freud  ジークムント・フロイト

真夏の暑さも終わり、

道では金木犀の匂いがしてきた。


いつものルーティンの如く、

今日もポータルサイトを舐めるように見ていた。

その中で気になるものがあり、

資料請求をポチポチしていた。


ただ気持ちはブルー。


何故なら、

素人は某地方エリアを投資対象としている為、鬼のように移動費だけで消えていく。


毎度買えない日々が続く事で、

落胆して飛行機に乗るのだ。


地方勢は地方に住んでるだけで、

チャンスも多く、

気持ちプチリッチであることを

知ってほしいことは余談である。


さあ気持ちを切り替えて、

今日も都の玄関口、羽田空港に向かう。


因みに飛行機で行くくらいだから、

見たい物件があるからだろうと想像するだろう、そこ読者!


ノンノンノン、予定はノープラン。


内見予定の物件は無いが、

とりあえず現地に向かうのだ。



因みに、

何がヤバいかって、

見る物件が特に無いのに、

飛行機に乗っていることだ。


数万円をドブに捨てる可能性も高い。


だが、現場に行かないと何も始まらない。


あの有名人も名言を残していた。



「事件は会議室で起きているんじゃない。

現場で起こっているんだ」


素人は、現場を知らないことが嫌いだ。


何故だって?

理由は簡単だ。


携帯ポチポチしてても、

実際の現場(物件)の状況は分からない。


具体的には、

「リスク」がわからないからだ。


現場を見ずに、

数値面だけで地方物件を購入までに至る都心の投資家がいるとよく耳にする。


無知ほど高い買い物は無いと断言する。



折角なので、

リスクとは?を考えてみてほしい。


客付リスク

リフォームリスク

周辺環境リスク

  ・

  ・   ・

さらに細分化させていくと、


本当にその家賃で問題ないか?

クレーマーはいないか?

見た目はいいが、裏に隠された故障は無いか?

••••


色々出てくる。


これからリスクを査定して、


それでも自分のリスク許容範囲に

収まる場合物件購入に至るのだ。


ここまで姑の様に、

リスク!リスク!言うのは、

不動産には1発退場!があり得るからだ。


<知識>武装して、


<経験>を積んで行ってほしい。


知識と経験がきっとあなたの助けになってくれる。


一歩一歩でいいのだ。


リスクをコントロールする事ができるようになるはずだ。



だいぶ話が逸れたが、

そんなこんなで無事に地方エリアに到着。


ここから鬼の様に

テレコール及び飛込み、

ポータルサイト検索何でもした。

※勿論、事前にもしている


そんなこんなで1件内見したい物件が見つかる。



週末にアポイントを取り付け、


早速心躍らせながら現地に向かう。


物件のスペックは、以下。


2,500万円

築20年後半

軽鉄

利回り15%


融資次第では、

アリになる可能性があった。


現地に着くと、

ザーッと内見をしていく。


桜の木があり、

春になるとお花見できそう!

とかよくわからない妄想をしていた。


内見方法も色々あるが、

ここでは割愛する。


内見を終えて、

とりあえず融資打診するかーと内心思った。


すると、仲介さんがモゴモゴ何かを言い出した。


「実はまだ非公式ですが、桜の木を挟んで御隣の物件もこれから売りに出す予定です。今回の物件と同じ売主様です。」


内心きたー!と心の中で叫ぶ。



現場に行かない限り、

こう言う話は貰えない。


素人は比較的物件を紹介して貰える事が多い。実はTIPSがあるのだが、本編には関係がない為スキップする。


仲介が続け様に話していく。


「15室ほどあり、2Kです。

3,000万円で売り出そうとしております。ただ築古であまり購入を勧めないです。築35年を超えており、厳しいと思います….」


素人の心の声は、以下だ。


素人の心の声)

「おっしゃー!築古で充分利回りが出そう。一部相談の上、指値を2,500万円前後で刺せば、ざっくり利回り25%は狙える!」



そう、

何を隠そうシュミレーションをしすぎてて

大体頭の中でざっくり計算できる様になってた。


またまた余談だが、

シュミレーションを頭に叩き込むことは非常に重要である。

意外とこれが出来てない人が多い。

たくさんシュミレーションを行い、

是非頭にシミュレーションシートを叩き込んでほしい。



話を戻す。


素人:「今内見できますか?折角なので、是非内見させてください!」


仲介さん:「実はまだ売主様から鍵を預かっておらず、管理会社も知らない状況です。ただ空室がある為、一部の部屋は内見可能です。

入居希望を装って、内見しましょう!」


と言い、管理会社にキーボックスの番号を聞き出す仲介さん。


そんなこんなで、

無事に2件目の内見がスタート。


内見して見ると、



最初の部屋は、天国かよ…と思った。

リフォームもしっかりされてる部屋で綺麗。

バストイレも別でこりゃアリなぁと思いつつ、なんでこんなに綺麗なのかと聞くと、

実は数年前に火事があって、

一部焼けたそう。

そのついでに、修繕されたようだ。


次の部屋へ向かう。




感想は、地獄かよ…..と思った苦笑。

あれに荒れてた。

トイレは和式。

風呂場は汚いし、キッチンには大量のフン。

なるほど、明らかに客付をやってない事がわかる。


他の部屋は鍵が無く、

管理会社が持っているとのこと。

リフォームは行っておらず、

客付もしていない状況とのこと。


仲介さん:「やはり、厳しいですよね….

まだ売主様に確認は取っていないものの、この値段だと売れないと思い、数百万円値引き出来るか売主様に確認しようとしておりました。」


マジかよ、

なんて協力的な仲介さんや!と思う素人。


素人:「そうですね。修繕に多額の費用が掛かり、この金額では買えないです。その為、指値前提で検討させて頂けると幸いです」



ざっくり一部屋あたりこれくらいリフォーム必要な概算を弾き出す。

それに基づき、指値をもとにシュミレーションを実施していく。

これは買える。

やれる。


遂に、巡り巡って素人は出会ってしまった。

理想的な物件に恋に落ちた。


そこからすぐにリフォーム会社と

アポイントを数件取り付けてリフォーム算出。

客付ヒアリングも行い、

少し需要は厳しいと感じだが、

満室にせずともいけると判断しGO。

融資も金融機関に打診して、内諾を貰う。



毎日リアルにワクワク高揚していた。

遂に、アパート買えるのかー!

長かった。本当に長かった。

沢山苦労したし、やっと報われる。




全てが整い、

現場で最終チェックを行う為、

再び現場にきていた。



すると、入居者さんが通り過ぎる。

偶々話しかけられる。


入居者:「こんにちは、内見に来られてるんですか?」


入居希望者じゃなく、

あなたのオーナーになるんやぞ!

とか内心思いながら答える素人。


素人:「そうですね、この近辺に引越しをする予定で内見にきております。どうですか、このアパート。住みやすいですか?」


入居者:「近隣にスーパーもあり、繁華街もすぐそばなので生活はしやすいですよ。ただ私は引越しを考えています」


いやいやいや。

君は何を言い出すのかい?

と思う素人不動産。

入居率下がると、CF下がるやないかい!

と安易に思っていた。


入居者:「実は先日朝、お隣の方が逮捕されまして、、、後でわかったことですが、このアパート元ヤ〇ザの方が多く住まれているようです」



突然の告白をされて、

頭パニックな素人不動産。


購入予定の物件が、

まさかの

ヤ〇ザアパート!?


この人は何を言ってるんだ!と思い、

どうせ嘘だろと何故か楽観的になり出す。


ここから話は急展開していく。

素人不動産は

仲介さんに状況を説明して、

調べてもらう事にした。


すると、

出てくる、出てくる。


•元ヤ〇ザの方が複数名住んでいる

→生活保護を受けてるため、今は問題ない

•最近逮捕された方がいる

•入居者同士で揉めている、警察沙汰

•逮捕に薬物にフルコンボの人もいた


頭を抱える素人。

でもこの物件に恋に落ちている素人。

何故か何事もポジティブに受け取り出す。





“恋は盲目”





“Love is blind”






完全に物件に恋に落ちてしまい、

周りが見えなくなっている素人。




あれこれ理由をつけて、

ポジティブに考え出す。



投資でやってはいけないことは、

感情で判断することだ。



悩みに悩んでハゲそうだった。


恋に落ちている為、


気が狂いそうになりながら、


更なる指値を行い、


結論この物件は買えなかった。


正確には、買う勇気が無くなった。


自分でリスクをコントロール出来る自信がなかった。


一軒目は入居者に問題ないものの、

こちらも買えなかった。

2番手で負けた。



結局、今回も買えなかった。



何回目だろうか、この気持ち。


悔しい


本当に悔しい。







いつだって君は突然現れる。


ふとした時に、出会う。



そして、恋に落としてくる。




恋に落ちているときほど、 苦痛に対して無防備であることはない



恋に落ちることは良い。


でも感情で判断してはダメなんだ。


恋から目が覚めると、


現実を突きつけられる。


寝ても覚めても、その事実は変わらない。


不動産は1発退場があり得るからこそ、


現実を客観視し、

リスクをコントロールしようと誓う。



また数万円をドブに捨てた。


よく言えば、<経験>に変わった。



また今日も飛行機に飛び乗る。


嵐の様な気持ちだったが、

今日は満月だ。


月明かりを探しながら、


また君に会いたい。



以上、素人不動産の失敗ストーリー。

つづく


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