「ヤモリの単語帳」とは
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今回の記事は「減価償却」についてです。
減価償却は収支シミュレーションや法人決算においても重要な考え方なので、一緒に理解を深めていきましょう。
そもそも減価償却とは何か?
減価償却とは、建物などの固定資産を使用できる年数に応じて分割して費用計上していく会計手続きのことです。
例えば物件を購入した場合、購入した年度に物件金額の全額を費用として計上することはできず、耐用年数(固定資産を使用できる期間)にわたって分散して計上していくことになります。
減価償却は飽くまで会計上のルールなので、実際に摩耗や劣化によって資産価値が減少した金額ではなく、現金支出は発生しないことも注意が必要です。
また、土地は時間の経過や使用することによって価値が下がらないことから、土地は減価償却の対象外となります。従って、土地と建物を一緒に購入した場合には、建物及び設備部分のみ減価償却の対象となることも覚えておきましょう。
なぜ減価償却が必要なの?
減価償却によって、建物の取得金額を利用期間にわたって公平に分配して費用計上できます。減価償却を行うことで、毎年の利益を実態に即して正確に表すことができます。これを会計上の用語で「費用収益対応の原則」と言います。
❓「費用収益対応の原則」 当期の利益を算出する際、当期の発生費用額を当期の収益額に対応する部分と、次期以降の収益額に対応する部分とに区分する原則。
つまり、当期に発生した費用のうち、当期の期間利益に見合う分のみ当期費用を「減価償却費」として計上し、それ以外の費用を「建物資産」として計上する必要があります。
個人と法人で物件を購入した場合の違いは?
個人は強制償却・法人は任意償却 個人で不動産を購入した場合、減価償却を必ずしなければなりません。所得税法上、個人では減価償却費の計上金額や時期を任意に設定することはできず、毎年必ず償却限度額を減価償却費として経費に計上する必要があります。 他方、法人で購入した場合、法人税法上、任意償却が認められています。法人では減価償却費として、法定耐用年数に基づいた償却限度額と法人が減価償却費として会計処理した金額のいずれか少ない金額と取り決めされています。つまり、法人税法上では、減価償却費の計上を償却限度額より少なく(ゼロ含む)することが可能です。任意償却で損金(費用)計上を抑えると、所得(利益)が増加することになり、結果法人税の支払いが増えることになります。そのため実際に税務署の観点から追加徴税の指摘を受けるリスクは限定的です。 ただし上述した通り、本来の企業会計の原則に反するもので、上場企業では監査法人より任意償却による利益調整の指摘が入り、適正な決算書として認められないこともあるので注意が必要です。
📝 個人名義と法人名義による償却方法の違い 個人名義で物件を購入した場合は、法定耐用年数の期間にわたって減価償却費を計上する必要が必ずあります。 法人名義で物件を購入した場合は、法人税法上、減価償却限度額内であれば、減価償却費を少なくして損金計上できます。
法人で購入した場合、どのように減価償却費を計上すればいい?
法人の与信を育てていくという観点で、賃貸経営の実態に合わせて健全な決算書を作っていくことが重要です。特に中古・築古物件を法人で購入する場合には、法定耐用年数よりも長い期間で償却年数を取ることで、減価償却費を抑えて利益を残すことができます。黒字決算を持続することで、金融機関の法人に対する与信評価を高めることができて、その結果継続して融資を受けやすくなります。
法人で購入した場合、融資期間で耐用年数を設定することはできるのか?
会計税務の観点では法定耐用年数による簡便法が最も受け入れられやすいです。見積り法については鑑定士から意見書まで取って、根拠ある耐用年数を出すこともできますが実務的に多く使われていません。
不動産賃貸業を行う法人の場合、実態として融資年数で建物の耐用年数を設定することはあります。
法人名義で不動産を購入する場合、金融機関から融資を更に引いて事業拡大を目指すならば、税理士と相談した上で、融資年数の期間で耐用年数を取って納税実績を積み上げていくことをお勧めしています。
📝 簡便法の耐用年数の計算方法 【法定耐用年数の全てを経過している場合】 中古物件の耐用年数=法定耐用年数×20% 例)木造・築40年の場合:22年×20%=4.4年⇒4年 【法定耐用年数の一部を経過している場合】 中古物件の耐用年数=法定耐用年数-経過年数+経過年数×20% 例)木造・築15年の場合:22年-15年+15年×20%=7年+3年=10年
建物構造別に法定耐用年数が異なる
法定耐用年数で償却する場合(個人名義での購入はこのパターンに該当)、建物構造によって法定耐用年数は異なりますので確認しましょう。
償却期間を短くするデメリットを理解する
償却期間を短くすると、減価償却費を多く計上して利益を圧縮することになります。その結果、その年度の利益に対する納税額の抑制は一時的に図れますが、償却期間終了後の将来の利益への課税額が増えて、更に売却時のキャピタルゲインの課税額は増えることになります。つまり、課税のタイミングを未来に繰り延べているだけであり、単純に節税効果があるわけではないことに注意しましょう。 所得税と譲渡所得税の実効税率の差分による節税メリット(実際の利益に適用される税率の差異)は、収支シミュレーションや物件保有期間などに応じて異なるので、税理士と相談しながら、中長期のプランニングが求められます。 また、融資を引きながら次の物件を購入して拡大していく観点では、償却期間を短く取ると、足元の納税額は抑制できても赤字決算となってしまうことと、負債が減るよりも建物資産価値が減る方が早くなり(建物減価償却費>元本返済額の状況)、銀行の評価が下がってしまうこともあるデメリットも理解しておくことが大切です。
物件購入前に減価償却も含めたシミュレーションをする
減価償却は会計帳簿上の数値のみ価値が減少し、実際の現金支出はありませんが、納税額に影響を与えます。物件を購入する前に、減価償却も加味したキャッシュフローのシミュレーションをすることが大切です。大家のヤモリでは前提条件を入力すれば30年間のキャッシュフローのシミュレーションを自動で作成できるので、物件購入を検討する際にはご利用ください。
特に収益性の低い物件を、元利均等返済の借入条件で融資を引いて購入する場合は注意が必要です。元利均等返済としている場合、当初は元利返済額に占める利息の割合が多く元本の割合が少ないものの、徐々に利息の割合が少なくなり、元本の割合が多くなります。
そうなると借入の元本返済の金額が増加し、元本返済額と損金計上できる減価償却費と支払金利の金額が入れ替わるタイミングで、課税利益が大きくなり支払う税額が多くなるため、手残りキャッシュフローがマイナスになることがあります。この状況に陥ることを「デットクロス」と言います。 予期せぬ現金支出を避けるために、事前物件の収益性とキャッシュフローの推移をシミュレーションしておくことが重要です。
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